僕が渋谷で一度だけセックスをした女性は黄金の耳毛を持つ女で
それ以来僕は黄金の耳毛を探し求めて彷徨い続けている。
僕が始めて彼女に会ったのは駅のホームで、彼女は僕に「写真家ですか?」と尋ね僕は「ある意味そうかもしれない」とこたえた。
彼女が僕に話しかけなければ二人は出会わなかったし、二人が出会わなければ僕は一生黄金の耳毛に会うことはなかっただろう。唯一無二の黄金の耳毛は僕の前に突然現れて僕らは流れるように体を求め合った。
僕が探し求めていたものは、美しい顔立ちでもなく、豊満な胸でもなく、穏やかな精神でもなく、黄金の耳毛を持つ女なのだ。
茹だる様な暑さの中、僕は黄金の耳毛を愛撫した。
現実は異常であり、クリエイティブ性の欠落に気づくことなく慣れ親しんだ枠に安堵する。
小さな恐れに対して人生を削っていることに気づかず、微々たる喜びに感化する。
自己を誇示する術を僕はまだ知らない。
