2008年8月アーカイブ

冷ややかな夜に秋の訪れを知らされて顔に跳ね返る小雨の中バイクを走らせる。
前を走るワゴンのバックライトは赤く信号は青い。

夜が明けようとしていて、やがて街頭の存在感が失われていって当てもなく道と言う道を駆け抜ける。
木々は光合成の準備に取り掛かり、虫は短い一生の中で限られた時間を静かに過ごす。
路面は濡れていてガソリンの残りは半分を切っていた。

僕よりも一回り若い世代の感情がコンビニエンスストアの前に屯する。
ガソリンスタンドの前を走り抜けると眠そうな顔をした青年がこちらを見ていた。

ラブホテルからセックスを終えた男女が少し気まずそうに出てきた。

イヤホンから聴こえる一定のリズムは僕の鼓動とリンクする。

心の鍵が音も無く壊れていくのが解った。

メキシコで生まれてサンフランシスコで育った。
ラスベガスでドラッグを知りワシントンの大学で勉を学んだ。
ニューヨークで女におぼれ西海岸で犯罪に手を染めた。
だからと言って後悔はしていないしむしろ誇らしげでありさえする。

扉の向こうに静かに佇む一人の女性に恋をして日中は車の中で過ごし夜はコインランドリーで時間を潰した。
途方に暮れてメキシコに戻った時は30年の時が過ぎていて記憶に残っている街並みは全て消えていた。

ポップコーンとペプシコーラを両手に抱えリメイクされた50年前の映画を嗜んだ。

手からこぼれ落ちた幸せと掴みきれなかった感情とに右往左往しながら音の無いリングにバスケットボールを投げる。
時代は流れ人類は進化し核兵器は高度化を繰り返しても
鎖と一枚の板で作られたブランコだけが淀みにはまったままそこに存在した。

雪が舞い落ちて消えてなくなるまでの少しの時間寒さと静けさに感化された。
アスファルトに身を投げ出して冷えた頬を涙が伝った。

忙しさを言い訳にして拒絶することの出来ない睡魔から逃げられないでいた。

寂しさを言い訳にして孤独からの逃避行を繰り返した。

それから18年後の今日、日本で熱いエスプレッソに砂糖を二つとクリームを一つ坩堝化させて胃に流し込んだ。

少年

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駆け回って気づけば陽も落ちていて、想いを何処にぶつければ良いのか解らずに涙し靴を脱ぎ捨てた。
あの頃の僕は何を考え何を想いどの様な未来を想像していたのか。

どの様な現実を創造していたのか。

過ぎた夏の思い出が胸の中で疼き、蜃気楼と照りつける太陽の狭間に身を投げ出して
満天の星空へと移り変わる青空を見上げて嘆く。

時間は流れていて、新しい生命や、新しい樹木の成長から作り出される新鮮な感覚と
価値ある種と共に成長する緑の中、渓流の流れに身を委ねる。

塗り重ねられた慣れが世界の果てまで覆いかぶさる。

少年の僕は少しばかりの期待を抱きビルの屋上へと上り静まり返った街を眺める。
ゆっくりと目を閉じて夢を思い描く。

4月27日や10月23日に何か特別な意味でもあるのだろうか。

凛とした冷えた外気に身を任せて、静まり返った夜の街頭の下でセックスについて語る。

8ヶ月ぶりに足を踏み入れた故郷の空は広大だった。
大都会で暗く鬱した世界のどす黒いそれとは違って、開放と清涼感のある透き通った空が広がっていた。

ある場所は開拓が進み開けていて、ある場所は相変わらず変化の無い時が流れていて
幼い頃に何千回と歩いた道を、少し広くなった歩幅で歩きながら変化と不変化の狭間で蝉の鳴き声に汗を流す。

忙しさに追われ駆けずり回る日々が嘘のように
全ての束縛から解放されることで脳内に蓄積された不純物の濃度が少しずつ薄くなっていく事を感じる。


ある日は畳の上で湿度と冷えた麦茶と扇風機から創りだされる流れ落ちる汗の中ドストエフスキーの罪と罰を食らい。
ある日は祖父の感性と僕の感性との間に延々と続くハイウェイについて語り合い。
ある日は偶然が生み出した出会いの中サッカーにおけるキーパーの役割について想いを巡らせたり。
ある日は腹筋とラウンジ(キャバクラ)についての関係性について語り合い。
ある日はいもがらぼくとに成るために昼間から酒を引っ掛けてごろごろしたり。
ある日は結婚と妊娠と恋人と失恋と純愛について語り合い。

詰まるところ「セックスとは愛を確かめる行為」なのだなんて言葉を投げかけてみたり。

そんな事を熱く語る僕と、ゲロ臭いトイレがあるファミレスの中で
夜が更け、朝がやってくる時間の中、生気が養われていくことを感じる。

2011年9月

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